「死」や「老い」についての学科

マイスターです。

海外の大学に関するニュースをチェックしていると、日本にはない珍しい学部学科をしばしば見かけます。
今日は、そんなひとつをご紹介します。

【今日の大学関連ニュース】
■「英大学、『死』の学位を新設」(AFPBB News)

英南西部のバース大学(University of Bath)は12日、葬儀に関する学位の提供を開始すると発表した。死別の悲しみに対するカウンセリングや、法律、顧客サービス、遺体の廃棄といった専門的な業務を網羅したものになるという。
バース大学は、英葬儀業界の事業者団体National Association of Funeral Directorsとの共同計画として、葬儀に関する2年間のコースを新設した。1年間の延長で学士を取得することもできる。
バース大学は、すでに「死と社会」に関する修士号取得コースを運営している。
新コースは、「専門的な実践を通じて、死、死ぬこと、失うことなどに関する社会科学的、人文科学的な視点の広範な理解」を提供するよう設計されている。また、同大学によると、このコースは「葬儀業界で働いている学生らにとって特に関心の高いものになる。体験や実践に影響を与える社会問題について、理解を深めるための機会を提供する」。
(上記記事より)

イギリス、バース大学の取り組み。
「葬儀に関する学位」だそうで、「葬儀業界で働いている学生らにとって特に関心の高いものになる」と大学は説明しているようですね。

この大学には、もともと「死と社会」に関する修士課程のコースが存在します。

■「MSc Death and Society」(University of Bath)

これと比較して、新しい学士課程のコースは、「英葬儀業界の事業者団体National Association of Funeral Directorsとの共同計画」として新設されたとのことですから、葬儀業界で活躍できる(?)人材の育成という点に焦点が置かれているのかも知れません。
より実践的なカリキュラムになるのかなと想像します。

葬儀に関する学位というのは、日本ではちょっと見かけません。

「死を考える」ということで言えば、「死生学」という学問が存在します。
日本には死生学を専門に学ぶ学部や学科は存在しませんが、哲学や倫理学のコースの中に、死生学に関する授業が置かれている場合があります。

バース大学のこのコースは、おそらく死生学にも深く立脚した内容なのだろうと思います。
確かに人間にとって、死も、葬儀も非常に重要なテーマですから、専門的にそれを学ぶコースがあってもおかしくはありません。
学問的にも、面白いと思います。

ところで、世界トップクラスの高齢化社会を迎える日本ですが、にも関わらず、「死」や「老い」を専門的に学ぶ学部や研究科を、大学がつくったという話はあまり聞きません。

例えば、死生学を研究する研究者は、個人単位では色々な大学にいらっしゃいますが、様々な観点から死や生について学ぶ学科となると……やはり、哲学科や倫理学科になるのでしょうか?
でも、日本全体の中でこういった学問が今、脚光を浴びているというイメージはやはりないように思います。

「老い」についても同様です。

こちらは、数は少ないのですが、いくつか学べる大学があります。
桜美林大学には、老年学を専門的に学べる大学院課程がありますし、東大のジェロントロジー寄付研究部門は、学部生向けの講義を持っています。

■「国際学研究科 老年学専攻」(桜美林大学)
■「ジェロントロジー寄付研究部門」(東京大学)

ただ、やっぱりこちらも、他にはほとんど見かけません。
考えてみれば、「老い」について学ぶって、日本ではものすごく重要なことだと思うのですが、どうしてこのような状況なのでしょうね。

学部や学科として存在しないからなのでしょうか、「老いについて学びたい!」と言っている高校生も、滅多に見かけないと思います。
そういったことに興味がある生徒は、より実践的な関わりが期待できる、福祉学部や看護学部を目指すのかもしれませんが、それとは別に、高齢者や高齢化社会について学び研究する学科があってもよさそうなのに、と個人的には思います。

先日の記事で、新設される予定の学部学科のリストをご紹介しましたが、ここ数年、「子ども学科」は次々と誕生しています。

「少子・高齢化」と言われているのに、子ども学科は次々とでき、老年学科はいまだできる気配もありません。
考えてみると、ちょっと不思議です。

おそらく、「子どもについて学ぶ学科は受験生を集められるが、高齢者について学ぶ学科なんて作っても、人気が出ない」という判断があってのことなのだろうと思いますけれど……うーむ。

以上、冒頭の記事を見ながら、そんなことを考えたマイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。

1 個のコメント

  • この大学のあるバース(Bath)というのは、英語の風呂(bath)の語源になった温泉保養地ですよね。そういう土地柄もあるのでしょうかね。