「大学生『夢』の診療所設立、会社・学校帰り気軽に受診」

最近、体調を崩して病院に通っていたマイスターです。

カンボジアから帰った後、お腹を壊しました。最初「話題のノロウイルスか!?」と思ってビクビクし、病院に検査に行こうとしたのですが、休日診療センターではこういった特殊な検査を受けることができません。結局、平日に休みを取りました。
仕事を休めないほど忙しい方はどうするんだろう、耐えるしかないのかな、なんて考えてしまいました。

マイスターのは特殊なケースでしたが、しかし遅くまで仕事をしている方は、例えばインフルエンザにかかったとしても病院で診察を受ける時間がありません。考えてみれば「何かあっても医者にかかれない」って、生活する上で無視できないリスクです。

そんな多忙な勤め人の方々の不安を、少しだけ解消してくれるかも知れない事業が、大学生達によって始められたようですので、ご紹介します。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「大学生『夢』の診療所設立、会社・学校帰り気軽に受診」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070105ik06.htm
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会社や学校帰りに気軽に寄れるコンビニエンスストアのようなクリニックが欲しい――。そんな願いを大学生たちが実現した。

東京のJR新宿駅前に昨年11月、オープンした「コラボクリニック新宿」の診察時間は午後6時から3時間。リピーターも増加しており、学生たちの発想は利用者の心をつかんだようだ。

クリニックを考案したのは、東京大学、東京芸術大学などの学生約20人。東大1年の城口(きぐち)洋平さん(19)が受験生時代、かぜを引いても、昼間は学校があって病院に行きにくかった経験から、“コンビニクリニック”を思い描いていたのがきっかけだった。

これを聞いた高校の先輩で、東大医科学研究所客員助教授の上(かみ)昌広さん(38)が関心を持ち、上さんの研究室が医療面でのアドバイスや医師の紹介などバックアップを約束。城口さんは賛同したサークルやゼミの仲間とともに、〈1〉利用しやすい時間帯〈2〉通勤・通学に便利な場所〈3〉患者と医師が密接なコミュニケーションを取れる――の3点を目指し、計画をスタートさせた。
(略)
今年春には医療法人申請する予定で、「ビジネスとして面白い」と評価する企業人の協力も得られ、将来的にはフランチャイズ化を目指す。城口さんは「知識や経験がないからこそ、新しい発想で、自分たちが求める医療を実現して行きたい」と夢を語る。
(上記記事より)

というわけで、大学生達がビジネスモデルを考案し、実際に経営する「コンビニクリニック」です。

■コラボクリニック
http://collaboclinic.com/

実際の医療行為は、もちろん免許を持っている医師が担当します。
記事によれば、このクリニックの経営には、以下のような工夫が凝らされているそうです。

○診療時間をサラリーマンが寄りやすい平日午後6時~同9時に設定。

○昼間は研究や病院勤務をしている医師5人にアルバイトで来てもらい、診療体制を確保。

○通常、クリニック開業には2000万~3000万円かかると言われるが、通勤・通学客の多い新宿駅西口から徒歩1分のビルに格安の事務所を見つけ、医療機器もネットで格安品を買い集めるなどして、150万円に収めた。
(上記記事より)

大学生が起業する例はありますが、「医療」でというのは非常に珍しいのではないかと思います。

記事を読む限り、東大の教員から協力を得られたことも大きいのだろうと推察されます。アイディアを出した学生と教員とは高校の先輩後輩の関係ということですが、このように学生の構想を周囲の教員が聞いて助言し、実現させるという場があったことにマイスターはちょっと感心します。

そして、学生が起業するのはおそらく最も難しい「医療」分野だということも、ポイントかと思います。

○大学生だけでは絶対に運営できない(免許を持った医師が必要)

○事業の社会的責任が大きい

○医療機関を立ち上げる場合、膨大な初期投資がかかるのが普通であり、学生が自力でどうにかできるものではないと考えられている

……といった特殊性が医療サービスにはあるからです。ネット企業ならともかく、病院を立ち上げるなんて言ったら周囲の大人は心配し、やんわり反対することも多いのではないでしょうか。
でも冒頭の記事の事例では、学生のユニークな構想に対し、実際に開業されるところまでサポートしてくれた方々がいるわけですよね。そこに感心します。

「とても学生の手に負える事業ではない」と反対するのではなく、「学生にはできないことも多いが、そこは他の方の力を借りればいい。やってみたらどう?」とアドバイスする。これは理想的に聞こえますが、実際にはアドバイスする側にもかなり大きな負担がかかることです。
ですから、この事業の計画を支えた周囲の方々はすごいな、とマイスターは思うのです。

大学生によるクリニック、
医師はアルバイト、
設備は格安品……

ということで、このクリニックの診療に不安感を覚える方もいるかもしれません。そこは、皆様それぞれの考え方次第です。普段から病院に行ける人は批判的な見方をするかも知れないし、普段とても病院に行く暇がないという多忙な方はこのクリニックの誕生を大歓迎するかも知れない、ということでありましょう。
はじめから完全無欠な病院を作るということが目的なのではなく、気軽に診療を受けられる場を作ることが目的なのですから、この診療所での治療が難しいと判断されれば他の大きな病院に紹介状を書いてもらえばいいんじゃないかな、と個人的には思います。マイスターは「とても面白い!」と思いますし、便利そうですから自分でもかかってみたいと感じました。

マイスターは医療に関しては素人ですから、この記事の情報だけでクリニックの医療の質を判断することはできませんが、世の人々が持っている不満や不安を解消してくれる、待ち望まれていたサービスではあると思います。
ちゃんとプロフェッショナルから意見を受けられる体制を持っており、何かあったときに対応できるのであれば、学生がこうした公的な事業を担うことがあってもいいのではないかな、と個人的には思います。

最近では大学がインキュベーションセンターなどを持ち、学生にも企業を勧めていることがあります。学生起業の中心は、やはりネット関連事業などのようです。
しかし考えてみれば社会的、公的なサービスほど、学生の柔軟な発想を必要としているようにも思います。

厳密には学生起業とは違いますが、コミュニティの連携で病児保育を行う仕組みを作ったフローレンスなどはその良い例ではないかと思います(マイスター、フローレンスの事業モデルにはいつも感心させられます)。

■「組織概要」(特定非営利活動(NPO)法人 フローレンス)
http://www.florence.or.jp/about/

それに大学というのは非常に多様な人材を抱えている場所ですから、その気になればかなり広い領域の事業にアドバイスできてしまうのかも知れません。
医学部や看護学部には医療のプロが、工学部には技術のプロが、法学部には法律のプロがいます。学生が自力ですべてをやるのではなく、「社会の問題を解決するために、学内外のプロの力を学生が活用する」という視点で物事を考えたら、実は結構、できることがあるのかもしれない……冒頭の記事を読んで、そんなことを思いました。
(もちろん研究者なら誰でもいいというわけではなく、実践段階では、実践に明るい方の力を借りないといけませんが)

以上、今日はちょっとユニークな学生による事業をご紹介させていただきました。
マイスターでした。