ニュースクリップ[-11/19] 「松下グループ 幹部育成や人脈作り 大学との連携強化」ほか

マイスターです。

■「デイリーヨミウリ記者のコレって英語で?<いじめ>」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/learning/english/20061110us01.htm

確かに英語でどういうのか気にはなりますが、この言葉がこうしてタイムリーなワードとして取り上げられるというのは、悲しいことですよね。ネットを見ていて、そんなことを感じました。

さて、日曜日になりましたので、一週間分クリップしたニュースの中からいくつかをご紹介します。

グローバルビジネス展開の最前線。
■「松下グループ 幹部育成や人脈作り 大学との連携強化」(フジサンケイ ビジネスアイ)
http://www.business-i.jp/news/china-page/news/200611140009a.nwc

記事タイトルを見て、「おぉ、あの松下が産学連携によりいっそう力を入れるのか。これで日本の高等教育も安泰だ」と思ってしまいました。
でも実は、ここで報じられているのは「中国の大学との連携強化」なんです。

松下グループが中国の大学との連携強化に動いている。松下電器産業はこのほど、北京の清華大学と共同で中国人リーダー育成のための「指導力研究開発センター」を設立した。また松下電工は浙江省の技術系大学である浙江林学院と提携、学生を対象にシステムキッチンやリビングなど住宅設備、建築材料など住建商品で中国人消費者の立場からの意見聴取を行っている。中長期的な観点から中国ビジネスでも産学の協力態勢が欠かせないと判断した。

松下電器と清華大が設立したセンターは中国政府や企業の幹部、清華大大学院の学生、松下グループの現地経営幹部を対象とした3つの研修コースを設けている。創業者の故松下幸之助氏が力を入れた中国での社会貢献に加え、現地法人における中国人幹部の育成や人脈作りなどが狙いだ。
(上記記事より)

この「指導力研究開発センター」で学んだ中国トップ大学の学生達の中から、何人かが松下の現地法人の幹部候補生になってくれることを、松下電器産業は期待しているのでしょう。工学系の研究開発だけではなく、人事的な交流をにらんだ産学連携を進めているあたり、生き馬の目を抜く企業の競争を見る気がします。
精華大学とパイプを作りつつ、幹部候補生まで確保できたら、松下としては万々歳でしょう。学生にとっても魅力的でしょうし。

いよいよ受験料にも価格競争の波?
■「<大学受験料>割引導入の大学増加、早大も参入」(毎日新聞 Yahoo!NEWS掲載)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061117-00000056-mai-soci

「大学全入時代」の到来を迎え、各大学が受験生の確保に躍起となる中、受験料の割引制度を導入する大学が増えている。早稲田大学(東京都新宿区)が来年度入試で初めて導入するほか、拓殖大学(文京区)は1回よりも2回受けた方が受験料が安いという新制度を設ける。大手予備校によると、全国の大学の半数近くが割引制度を取り入れているという。一方、「そもそも受験料自体が高い」との声もあり、価格破壊はさらに進みそうだ。
(上記記事より)

「受験生の負担が大きすぎる。家庭の負担を減らすべきだ」という視点と、「価格を少しでも安くすることで、他大学との受験生獲得競争に勝つのだ」という視点。どちらも大切です。
もっとも後者については、受験料と受験者数との相関がどこまであるのか、疑わしい面もあります。また、そもそも「あるべき大学受験の姿」自体、今は迷走しているように思いますので、受験料が高いとか低いとかいう話の答えはそう簡単には出せないような気もします。

記事では、「河合塾の模擬試験は1回約4000円。それと比べても3万5000円などの受験料はまだ高すぎる」という河合塾関係者の話も紹介されています。ただ、河合塾の模試と、大学が行う入試は、主旨も目的も作られ方も本来全然違うものであるはずですので、同じ製品であるかのように語られるのはどうかと思います。
こう批判をされても仕方がない面もありますから、あまり強いことは言えないのですけれど……。

開学見送りが、受験生達の進路選択に影響を与えています。
■「関西科学大:開学先送り 推薦の受験生に動揺 苦情100件、指定校『寝耳に水』」(MSN毎日インタラクティブ)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/wadai/news/20061119ddn041040008000c.html

学校法人「奈良学園」(奈良県大和高田市、伊瀬哲也理事長)が来年4月の開校を予定していた関西科学大(奈良市)の設置申請を取り下げた問題で、「指定校推薦」で同大学入学を希望していた県内外の100人以上の高3生徒が、突然の進路変更を迫られ、動揺している。同学園には18日までに100件以上の抗議電話が殺到しており、週明けから、大阪、京都、奈良の3府県で説明会を開く。

指定校推薦の出願は12月1日からで、同23日に英語と面接試験、30日に合格発表の予定だった。しかし、県内の高校の進路指導担当によると、高校側が9月に推薦者を校内内定した段階で実質的に合格が決まっていた。このため、大半の生徒は、10月に出願が締め切られた大学入試センター試験や、他の公募推薦は見送っているという。

同大学はスポーツ科学部(定員200人)、看護学部(同120人)の2学部でスタートする予定だった。男女3人の指定校推薦が決まっていたある県立高の学年主任は「寝耳に水。保護者、生徒とも大きなショックを受けている」と話した。看護学部に女子生徒1人の推薦を決めていた県立高田高では、担当者が本人と保護者に状況を伝えた際、生徒は涙ぐんでいたという。

私立育英西高でも女子生徒1人が看護学部への推薦を予定。久保貴芳教頭は「看護学部は数が少なく、一つ駄目だから次、とはいかない。週明けに厳重に抗議する」と話した。
(「関西科学大:開学先送り 推薦の受験生に動揺 苦情100件、指定校『寝耳に水』」(MSN毎日インタラクティブ)記事より)

設置認可を取り下げたり、開学が延期されたりということは、可能性としてあり得ないわけではありません。しかし、指定校推薦まで出しておきながらこの時期に設置見送りというのは、いくらなんでもちょっと問題があるように思います。
振り回された格好の受験生および高校のお怒りは、よくわかります。

■関西科学大学
http://www.naragakuen.jp/kkd/

現在、関西科学大学のwebサイトでは、「諸般の事情」でオープンキャンパスを中止することにした旨だけが告知されています。(これも、オープンキャンパス予定日の前日に急遽公開された情報のようですから、混乱させられた方もいたことでしょう)

設置申請の内容に問題があったのかもしれません。いずれにせよここは、大学としてきちんと説明責任を果たした方がいいように思われます。

中国とアメリカ、教育での連携深まる?
■「温家宝総理、米教育長官と会談」(チャイナネット)
http://japanese.china.org.cn/japanese/274856.htm

中国の温家宝総理は17日、北京で「中国とアメリカ双方が、絶えず教育分野における協力レベルが向上し、中米の教育協力が両国関係の発展にますます大きな役割を果たすことを希望する」と述べた。
これは、温家宝総理が中国を訪問中のアメリカのスペリングス教育長官と会談した際述べたもの。
これに対して、スペリングス教育長官は「中国の皆さんと共に『覚書』の内容を実施し、米中の教育交流をさらに推し進め、両国人民の相互理解と友情を深めるために貢献したい」と語った。
スペリングス教育長官と中国の周済教育部長は16日、中国とアメリカの「さらなる教育協力と交流を拡大することに関する覚書」に調印し、ハイレベルな人材の養成、科学研究での協力、言語教育、小中学校の教育交流、及び定期的な教育に関する協議などについて広範な合意に達した。
(上記記事より)

先日から何度か本ブログでもご紹介している、アメリカの大学教育関係者団。日本でも、早大総長を始めとする国立私立の10大学のトップと、日米学長会議を開いて意見交換をしておりました。
中国では、「さらなる教育協力と交流を拡大することに関する覚書」に調印するほか、首相も直接、会談に出てこられたのですね。
現在、アメリカへの留学生が多い国はインド、中国、韓国、日本の順番。この調子だと、中国からの留学生はさらに増えそうです。

↓以下の報道もあわせてどうぞ。

韓国のジレンマ。
■「【社説】中国も教育を開放するのに …」(中央日報)
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=81864&servcode=100&sectcode=110

中国に米国、ヨーロッパの大学、学校の分校が100を超えて設立されているとインターナショナルヘラルドトリビューン(IHT)新聞が昨日報道した。授業料は高いが、留学費の半分で質の高い西欧式教育を受けることができ、中国人にも高い人気だという。平等を最も重視する社会主義国家でこのように教育開放が活発であるとは驚くばかりだ。
(略)
我々はどうなのか。経済は世界12位だというのに、教育は井の中の蛙だ。全教組など開放反対論者たちは教育市場が開かれれば公教育が崩壊すると主張する。政府はこれらにだらだら引き摺られて行っている。その結果、我々教育の質はますます落ちて、教育需要者にはそっぽを向かれている。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府に入って外国に出る早期留学生が毎年増え、昨年初めて2万人を超えた。これだから外国の学校が韓国学生を誘致するために血眼になる。数日前には米国教育長官が訪韓し、韓国の学生誘致活動を広げた。
政府が学生たちを外国に追い出す格好だ。
(略)
国際化時代には教育が国際化されるほかない。
それでこそ時代を導いていく人材を育てることができる。これからは無条件に反対するより公教育は守ってもよい条件で外国学校、特に大学を積極的に誘致しなければならないときだ。それが教育需要者の重荷を減らして、国家競争力を高める道だ。
(上記記事より)

一瞬「日本の新聞の記事?」と思うこの報道は、韓国の中央日報によるものです。
海外大学の分校が活発に設置されている中国に対して韓国では高等教育が閉鎖されており、それが韓国の教育レベルの向上を妨げている……という主張です。また、国内の大学市場を守ろうとした結果、結果的として学生達は海外の大学に流出しているとも。確かに韓国からアメリカへの留学生数は、前年比10%増という急激な伸びを示しているそうです。上でご紹介した、中国の記事と対照的です。
アメリカへの留学生数が増えているのは、グローバルに活躍する韓国人が増えるという意味では歓迎すべきことでしょうが、見方を変えれば上記のような焦りにもつながるわけですね。

この記事を読んでいて、もし今後、日本人の英語運用能力がぐっと高まったとしたら、日本ではなくアメリカの大学に進学しようという人も急激に増えるんだろうな……なんて考えてしまいました。
(もちろん、そういう条件下でも学生に選んでもらえる大学になれれば、何の問題もありません。むしろ大学関係者としては、海外から学生を呼べるくらいを目指したいものです)

以上、今週のニュースクリップでした。

自殺を報じるニュースはまだ続いています。というか、たまたま「自殺予告」が出たからこうして一つ一つの自殺が報道されているだけで、実際にはこれまでも、自ら命を絶っている子供はいたんだろうと思うと、なおやりきれません。
文科省が現在対応にあたっているかと思いますが、これは文科省とか学校とかだけでどうにかできる問題ではないように思われます。
公的な対策は進めるとして……同時に社会全体が周囲の子供達と対話を持つことも、何より大事ではないでしょうか。

今週も、本ブログをお読みくださり、ありがとうございました。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

マイスターでした。

1 個のコメント

  • 受験料割引について、入学関係のセクション所属ではないのですが、ちょっと感想を。
    この早稲田の入試は「1回で2回分の受験料をとる」というかなり特殊なものなので、それを他大と同列に並べて「早大も参入」というのはちょっとセンセーショナリズムに走ってるのは・・・
    この記者さんの考え方の根底には「入試とはいえ象牙の塔ではなく価格競争がなされるべきだ」というものがありそうな気がします。
    「入試」がコストに見合った内容かどうかの見識もなく、安くしたからといって、大学間の適正な競争が進むかどうかのビジョンもない記事だと感じたのですが、ちょっと言いすぎでしょうか・・・