早期の英語教育:韓国の様子から

英語力に自信がないマイスターです。

一人でアメリカに行って、一週間調査をして帰ってきた経験があるので、平均的日本人よりは英語力があるんだろう……とこれまでは思っていたのです。
しかしマイスターの場合、単にボディランゲージ(つまり非言語の表現力)が優れているだけなんじゃないかと、最近考え直しました。あと、度胸があれば日常会話くらいは、中学英語のレベルで案外いけるものです。

しかし、グローバル社会を生き抜けるだけの英語力があるかというと、全然足りてません。観光に行けるというレベルではなく、「知的プロフェッショナルとして」活動できるレベルに持っていきたいと思うのですが、先は遠そうです。
かくして今日も、通勤中、英会話CDをiPodで聞きながら通勤するのでありました。

多くの日本人は、自分がいつまで経っても英語を話せない理由を考え、

「語学というのはある程度、早めにやった方がよかったんじゃないか?」

という結論に毎回、たどり着きます。で、我が子をECCジュニアとかに入れたりするのですね。このとき、「早い方がいい」という根拠があるかどうかはあんまり気にしません。「自分は早めにやらなかったからダメだったんだ!」というのが根拠です(^_^;)

マイスターも、現状の英語教育では、いつまで経っても英語を話せる日本人は育たないよなぁと思います。そんなわけで、日本で議論されている「小学校から英語教育必修」は、気にはなるのです。

でも一方で、早けりゃいいってもんでもないんだろうなぁ、とも思います。

日本で「早期の英語教育」を論じる場合、反対派(?)が主張するのが、「まず先に日本語力だろう」というものです。確かにそうですね。

それに「小学校では、楽しく英会話に親しめるような教育にする」といった話も聞きますが、「どうせ数年もしたら中学受験のための英語教育になってしまうんじゃないだろうか」「楽しく英会話を学んでこなかった教師達が、楽しい英会話を教えられるわけないのでは」といった疑念も、個人的にはあります。

うーん、外国語教育ってやっかいだなぁ。

というわけで、ちょっとお隣の国の状況を見てみることにしました。

【教育関連ニュース】—————————————-

■「小学生留学は6千人超 韓国の英語教育事情」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200606080284.html

■「小学校から英語を学んだ韓国高1生の成績が大幅アップ 日本の高校生は、英語力を過小評価する傾向が見られる(PDF)」(Benesse プレスリリース)
http://www.benesse.co.jp/IR/japanese/release/pdf/20050318.pdf
———————————————————–

アジアでは小学校の英語必修化が、この数年でぐっと進んだ。お隣、韓国では1997年に小学3年から英語学習を導入し、週1~2時間行っている。
政府は、小学校教員に240時間以上の研修もしくは大学院修士課程の履修を奨励しつつ、2008年には全学年で英語授業を導入する。経済特区・国際自由都市の「英語没入教育」を試験実施する方針も打ち出した。小中学校で数学・科学の授業を英語でするものだ。自治体レベルでも「英語村」と呼ばれる留学体験施設が造成され、今春ソウル近郊に27万平方メートル超(東京ドーム約6個分)の巨大施設がオープンした。
(Asahi.com記事より)

というわけで、韓国の英語教育です。韓国ではこの通り、日本に先駆けて小学校での英語必修化を実現させたのですね。

ベネッセの調査は、小学校で英語が必修化された最初の世代が高校1年生で出した成績が、昨年までの1年生と比べて非常に伸びている、という内容です。韓国の「改革」の成果が正しかったことを後押しする結果になりました。

この小学校カリキュラム改革以前から、韓国は日本よりも英語教育に成果を上げているようです。

■「アジアの英語教育 第1回 韓国の英語教育事情:大学および社会人の英語力と教育」(英語教育情報誌 web Peripatos)
http://www.kirihara-kyoiku.net/peripatos/01/01_4.html

上記のサイトに日韓のTOEFLスコアの比較が載っていますが、1970年頃以降、韓国は日本のずっと上を行っています。
このサイトでは、小学校教育の様子も説明されています。

「小学英語の特徴としては、ゲームや歌、そしてお喋りの中で英語の力をつけるというのが中心になっている。また学年別に細かな基準も設けてあり、3、4 年生ではアルファベットを使っての英語だけで行う授業が必修になっている。覚える単語の数は、3、4年生で各100語、5、6年生では各150語が義務づけられている。」(『現代教育新聞』ホームページより)
1997年に韓国文部省が行った2,000組の子どもの保護者へのアンケートで、その91.9%が小学英語教育を高く評価しているそうである。また89.6%の人は、子どもは英語の授業を楽しんでいるように思えると答えている。
こうしてみると、韓国では、小学校からの英語教育の導入については、かなり評価されていると言える。
「web Peripatos」記事より)

このように、成果も上がり、しかも保護者からは好評なんだそうです。

おぉ、すばらしいじゃないか。
やっぱり英語は早めがイイじゃないか。

……と思ったけれど、続きを見てみると、気になる記述が

小学校で英語教育が始まれば、その下の幼稚園でもその準備に熱心になるであろうことは簡単に想像がつく。また、韓国政府が「英語教育は早いほうがよい」という結論を下したため、英語教育プログラムのない幼稚園は園児募集に苦しんでいると言われるほど、多くの保護者が就学前の英語教育を望んでいるのである。
早期英語教育に対する親の関心が高まるにつれ、幼児英語教育のための教材やプログラムが氾濫するようになる。「現在、韓国内で子ども向け英語プログラムを扱っている会社は30社以上にのぼり、これらの業者が作った教材、カセットテープ、ビデオテープだけで100種類以上ある。」(金淑姫『ママが教える子どもの英語』 白帝社)
一方、こうした早期英語教育の過熱に警鐘を鳴らす人も多い。ソウル市教育庁が新課程開始直後の1997年夏に調査した結果、ソウル市内に146か所の幼児対象の「英語学院」が新規開設され、25,000人の未就学児が通い始めたり、幼稚園で小学校の英語授業内容を上回る水準の英語授業が開始されたことが判明した。ソウル近郊の京畿道では「幼稚園の英語教育全面禁止」の指示を出す結果となった。
「web Peripatos」記事より)

小学校で英語を始めようとすると、幼稚園での英語教育熱が高まる。
うーん……なるほど。日本でも、十分に予想できる展開ですよね。

「英語よりも日本語教育が先!」と、日本の研究者達が主張するのもわかる気がします。
それに「小学校で英会話教育」には賛成でも、「幼稚園で英語」と言われたら、さすがに反対する日本の保護者も多いのでは。

このように、「早期化は、さらなる早期化を招く」という結果が、お隣韓国で現実に出てきてしまっている模様です。

さらにもう二点ほど、気になる記事をご紹介いたしましょう。

【教育関連ニュース】—————————————-

■「早期教育の副作用? 英語嫌いの子ども増える」(朝鮮日報)
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/06/25/20060625000004.html
———————————————————–

10兆ウォン台に迫るという英語教育市場。それとともに「英語嫌い」に陥る子どもたちが増えている。朝鮮日報が早期英語教育コミュニティー「スクスクドットコム(suksuk. com)」と共同で、359人の母親を対象にアンケート調査を実施した結果、「子どもが英語嫌いになったことがある」(48.7%)と答えるなど、英語嫌いの子どもが増えていることがわかった。
英語嫌いの症状は、◆英語塾に行く時間になると『お腹が空いた』と言う、◆「塾の先生がぶった」というような嘘をつく、◆家の中で大声をあげたりイライラした行動を取る、◆すぐに解けるようなドリルに長い時間がかかる、◆「英語で話さないで!」など英語に対する拒否感を示すなど様々。
シン・チョルヒ児童青少年相談センター所長は「勉強の無理強い、過度な塾通いが問題の底辺」とし、「遊びよりもワークブックを中心にした学習スタイル、宿題の多い塾に通う子どもたちが英語嫌いの症状を見せることが多い」と分析した。
(上記記事より)

一つ目が、これ。

「早期英語教育コミュニティー」での調査だということですから、このアンケートに回答したご家庭の子供達は、平均よりもハードな英語教育を受けている可能性が高いのですが、それでもちょっと気になる内容です。

日本にもキッズ向け英会話教室などのサービスはありますが、「英語が大嫌いだけどムリヤリ行かされている」という子供の話は、(もちろんゼロではないでしょうけど)まだあんまり聞きません。

しかし小学校で英語が必修化され、親が子供の早期教育に熱心になればなるほど、韓国の記事のような子供達は増えていくと考えられます。
今日の記事の冒頭でご紹介したAsahi.comの記事では、小学校の英語必修化の舞台裏として、

背景に、親たちの英語教育熱がある。一昨年度の小学生の留学者数は6千人を超えた。子どもと妻を留学させ送金し続ける父親を指す「キロギ・アッパ」(雁父さん)が流行語になり、就学前児童の英語塾に月数万円を費やすなど過熱している。また、韓国最大企業サムソングループは来年の新入社員から「英語で最小限の意思疎通ができない者は不採用」とする方針を発表した。
Asahi.com記事より)

……といった状況を報じています。
こんな状況じゃあ、早期教育が過熱化し、ノイローゼになる子供が出てくるのも無理はありません。

日本でもそのうち、英会話力を問う企業が、一流企業を中心に増えてくると思います。そうなったら韓国並みに、保護者達も英会話教育を我が子に施そうとするかも知れません。
ちょっと心配です。

そして、気になる記事の2つ目は、こちら。

【教育関連ニュース】—————————————-

■「優秀な生徒が米大学に多数志願 『韓国離れ』浮き彫りに」(朝鮮日報)
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/12/17/20041217000058.html
———————————————————–

ソウル市内の外国語高校の生徒と自立型私立高校である江原(カンウォン)道・横城(フェンソン)の民族士官高校の生徒が、今年の米国の大学の早期募集(early decision·early action)でハーバード大学、プリンストン大学、エール大学などの名門大学に50人余が合格したことが分かった。
まだ早期選考の発表は続いており、来年4月に発表される定時募集(regular)の合格者まで合わせれば、米国の大学合格者はかなりの数に上るものと見られる。
一部では優秀な生徒のこうした韓国の大学離れが、国際化をなおざりにした国内大学に対する一種の警告だと見ている。
(略)
これまでのところ大勢的な流れではないが、優秀な生徒が外国の大学の入試に集まる現象は、国内の教育制度に対する不満と、国内の大学の競争力低下が原因だと解釈される。
(略)
梨花外国語高校に合格したキム某さんの母は「正直、一生懸命勉強をしても、優秀な生徒を育ててくれない国内の教育制度のもとでは娘を大学に行かせたくない」と話した。
韓国外国語大学付属外国語高校のパク・ハシク教頭は「優秀な生徒たちが外国の大学を目標に勉強するのは、それだけ国内の大学の水準に満足できていないため」とし、「国際化を重視せず、国内の序列にあぐらをかいている大学に対する警告と見る」と話した。
(上記記事より)

そりゃそうですよねぇ。英語力が十分にあるのなら、アメリカに留学しますよねぇ。優秀な生徒達が韓国の大学ではなく、アメリカなどの大学に続々と進学している、という内容です。

気になる記事ではあるけれど、こういう結果になるのもしょうがないんじゃないかな、という気もします。日本の大学もいつかこうなるのかな……と考えてしまいますね。

韓国には「外国語高校」という種別の高校がありまして、これが、とても人気なのです。上記の「留学組」の多くは、外国語高校の生徒です。
あまりにも外国語高校に人気が集中するので、韓国ではこの「外国語高校」の入学に制限を設け、学校が所在する地域の子供しか受験できないようにする方針だそうです。ただ、その方針を発表した結果、国民や国内マスメディアから避難ごうごう、教育担当副首相の更迭も起きかねない騒ぎになっちゃいました。韓国人にとって、レベルの高い英語を学ぶことは、何よりも重要なことであるようです。

(参考)
■「韓国政府がエリート校たたき? 外国語高校志願に規制」(ワールド・スコープ)
http://www.worldtimes.co.jp/w/korea/korea2/kr060623.html
■[社説]金振杓副首相「教育の公敵に残るつもりか」 (東亜日報)
http://japan.donga.com/srv/service.php3?bicode=080000&biid=2006062164188
■「【社説】教育部はこれ以上教育をつぶすな」(中央日報)
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=77011&servcode=100&sectcode=110
■「経済・教育副首相、交替説」(東亜日報)
http://japan.donga.com/srv/service.php3?bicode=020000&biid=2006062639488

以上、韓国の英語教育に関するニュースをご紹介しました。

日本でも、英語教育は早期化する方向にあります。
その結果、もしかしたら、英語力のある日本人が大勢生まれるかも知れません。
日本の大学には進学せず、海外に羽ばたいていく学生も、今以上に出てくることでしょう。

その一方で、子供を幼稚園から英会話塾に行かせる保護者が増えたり、英語が嫌いになる子供が多くなったりするかも知れません。

隣国の事例を参考に、いいところは取り入れ、問題のあるところは修正しながら、日本の英語教育を考えていきたいものですね。

以上、マイスターでした。

1 個のコメント

  • いま韓国では平準化教育の隙間を埋めるために英才教育(超エリート教育)が始まっています。大学進学率が80%を超える国でこのような政策が必要なのかと感じています